ファイナルラストまで。
他ルートとの比較を交えた記述もしているので、全ルートのネタバレを含んでいます。ご注意ください。
eternicle
プロローグはスピカviewによるスピカルートの復習でした。
スピカが序盤から麦に「完全に私のこと好きなんじゃない?」という態度を向けていたことは流石に予想できませんでした。気が遠くなる時間を生きてきて、人に関わらないようにしてたとか言いながら、普通に感情豊かすぎる……。
スピカは「自分は心を空っぽにした」と自称していました。しかし、本人がそう思っていただけで、どう見てもご立派な人間らしさを持ってましたよね。
人々の暮らしを守り続けてきたことも、旅の中で出会った麦や広美のことを覚えていたことも。あれだけの長い時間を生きていながらすごすぎる……。
広美、好きだ
スピカの長寿設定が明かされた時点で、広美さんは昔のスピカを知っている人なのかなとは感じていました。それにしても60年越しに再会していたのは泣かせる設定でしたね。
60年間真澄町に根を張り続け、スピカの帰りを待ち続けていたのが、広美さん。
70年間真澄町に根を張り続け、スピカと娘の帰りを待ち続けていたのが、ピザじーさんでした。
同じようにスピカに助けられたふたりが、同じものをスピカに残そうとしている。
もしかしたら、自分は広美さんの意思を受け継ぐためにここまで来たのかもしれない。
いやー……過去作にも何度か登場していたけど、こういう"前例"のような年上キャラって良すぎる。まさか今作はおばーさんがその枠だとは思いませんでした。
尤も広美さんは最初から真澄町に住んでいたし、スピカと家庭を築いたりしたわけではないので、前例と言うには相違点が多いとは思います。
しかし、こうして広美さんのように一日一日を懸命に生き続け、一人一人が次世代にバトンを繋げていくように、みんなが誰かの居場所となっていくのがanemoiなんだなー……という話もあるのかもしれません。
広美さんは最終的には町長より長生きしたようで、タフなお人でした。
彼女の回想で出てきた風の男さんはどうなったのか不明です。これこそサマポケのように後天的に補完されそうな気がしてます。
もしかしたら広美さんは麦と同じように、最後には彼に"おかえり"が言えたのかな……なんてロマンチックなことを考えているのがここ最近。彼女の中にアルミアスはないし、探してくれる娘がいるわけでもないからそうはならないか。
スピカが広美さんに抱き着くCGはこのルートで最も感動した場面でした。
60年前と逆の構図なの良すぎるって……。こういう演出に弱すぎました。
まるでお祖母ちゃんと孫の触れ合いのように見えるけど、女と女の友情なんだよなぁ。
その後にバロンが亡くなってしまうのも辛かったです。
河瀬ルートで動物が老衰死するフリを見せられたり、直前に広美さんが亡くなるフェイントを仕掛けてきた後、ついに本当の命の終わりを見せられてしまうとは……。このルートで最も感動した場面でした。
スピカ、好きだ
そして、始まるAFTER STORY。のんびりゆっくり関係を深めていく麦とスピカが良すぎましたね。
ちなみに自分は最初の選択肢は『くそむしちゃん』を選びました。理由はそう呼ばれたいから。
YES/GO枕を持って夜這いに来る場面が最も美しいシーンとされています。「ふつつかものですが……よろしくおねがいします」。ヤバすぎ。今これ(任意の画像)
とか思ってたら最後に待ち受けていたのはスピカとの別れでした。
スピカが麦に一緒に行こうと提案した辺りでは、「二人はついにお互いを頼れるようになったのか……!」と青峰になっていたのですが、余裕で嘘でした。まあ……正直このブランドのことだからどうせヒロイン○すんだろうなと思っていたし、あまりにも予想通りすぎた;;
予想通りの展開すぎましたが、それでもここまで長い長いイッチャイチャを見せられてきた果ての別れだったこともあって、涙腺には来ました。
何よりもスピカの慟哭がすごい。彼女が「普通になりたかった」と泣き喚くのは世界への叫びすぎました。
これまで消滅したヒロインはここまで泣いたりしてませんでしたからね。最初は孤独に生きられていたはずのスピカが一番別れを惜しむまでになったという事実は、彼女の心の成長の証左だったとも感じます。
anemoi
始まった……"人生"が……!
おっぱいおばけ、好きだ
ついに明かされる玖琉未の正体。典型的な狂言回しキャラでしたね。
共通ルートでは小詠とセットで出演してるシーンが目立っていたので、てっきりサマポケの静久と同ポジションのキャラクターだと思っていました。
しかし、肝心の小詠のルートで毛ほどしか出番がなかったことや、玖琉未ルートが用意されてないことがわかった時点で、グランドルートでの重要キャラなのだろうと推測できるようになりました。プロローグでキャンプしていた人ってのは玖琉未だったのかな。
ちなみに自分が玖琉未ルートがないのを知ったのは、7ルートクリア後という遅さでした。
顔も性格もおっぱいも好みすぎるキャラクターだったので、攻略を後ろに回すことで楽しみをとっとくつもり満々でした。そんで時が来て依頼を選び続けてもルートに入れなくて「え!?」となってましたね……。
彼女とくっつくルートがないことには寂しさを覚えましたが、超重要キャラというポジションが与えられていたのは嬉しかったですね。
4億4000万年間地球で過ごしてきたニンリルさん。スピカの10万年と比べても格が違いました。
他にも同じような神様がいてもおかしくないと思いましたが、「"私だけは"個としての形を作って残った」と言っていた辺り、本当に彼女だけなのでしょうね。集合体としての繋がりを捨てているのが彼女しかいないだけで、淡雪みたいな同類は世界中に散らばってたりするのかな……?
色々と次元の違う長寿ヒロインでしたが、麦たちと話してる時はありえんぐらい人間臭くてひょうきんな女の子というのも良かったです。人間への落胆も吐露しているように見えましたが、端々の発言から人間が大好きなんだろうと思えました。
家族がテーマの一端である本作において、玖琉未は「人類の母」と呼ぶに相応しい人物でした。個人的には今作で二番目に好きなキャラクターでした。
のんびりまったりスローライフ
本作のグランドルートは、最終シナリオの割には起伏が小さい物語だったという印象はありました。
時折挟まる玖琉未のカミングアウトなどで、物語の核心に触れている感覚は得られました。しかし、個別ルートと同等のボリュームの割には、物語の動きは微小だったように思います。
要はコンフリクトを欠いているのだと思います。長い確執をついに解消するような、過去作のようなカタルシスのある問題解決を期待していると、肩透かしを食らうのかもしれません。
しかし、こうした作りになっていることから、本作は「緩やかに生きていく」というのがどこまでもコンセプトなのだと、自分としては納得ができました。
そして、子供の成長のプロセスがこれほどまでに精緻にたっぷり描かれているノベルゲームは、自分の知る限りでは他になかったです。
過酷な育児から始まり、子供の成長を実感し、旅立つ子供を見送るまで。麦パパの子育ての全てが詰まっていたと思います。
グランドルートにしてはあるまじきまったりなお話でした。
しかし、そうやって日常描写に重きを置くことで、章単体で「親としての半生」を描き切っていたのが本章『anemoi』だったのだと感じました。
ちなみに自分に子供はいません。甥はいます。はいこの話終わり。
また、そんなスローライフの中でも山場はしっかり用意されてました。ということで、心に残ったシーンをふたつまみ。
まず、穂乃夏は信じられないぐらいいい子だったなー……と思いました。特に心に残ったのは以下の台詞です。
「父が悲しい時は、ほのかが頑張る」
「だから……ほのかが悲しい時は、父が頑張って」
「それで……ふたりが悲しい時はいっしょに頑張ろう」
「いっしょに泣いて、いっしょに頑張って……いっしょに笑いたい」
これが10歳の言葉なのマジ??? どれだけ父親想いなのでしょうか。
これを言われて感極まって穂乃夏を抱きしめちゃう麦パパも好き。いい親子すぎました。
そして、ついに会えたスピカの前では母親に甘える娘に戻っちゃうというのも好きでした。
「おかーさんにずっと会いたかった」という子供としての我儘をついに吐露する。そりゃそうなるよね……今までよく頑張った;;
arrive
まさかこんな締め方をしてくるとは……と、衝撃を受けました。
舞台は本編の60年後。これまでの登場人物たちがじーさんばーさんになり、逝去していったことが語られていきます。
美少女ゲームでやっていいのかとも思ってしまう、非常にショッキングな内容でした。
しかし、月並みな言葉ではありますが、終わりを迎えるからこその人生です。作り手がここまで描き切ったことに敬意を表したいです。
最初に描かれたのは車椅子に乗った河瀬との馬鹿話。
グランドルートでの彼はあくまで町民の一人であり、主人公の人生観を劇的に変えてくれたというわけではなかったと思います。しかし、それでも麦の当たり前をずっと傍で支えてくれていた人物だったんだなー……と思えます。
老人になってもまだ仲良しな二人が親友すぎて好きでした。
60年間を孤独に待ち続けていた麦の、「物音は怖がるものじゃなくて誰かが帰ってくる期待になった」という独白も好きでした。
最序盤の学校暮らしのエピソードをここで持ってくるのが泣ける。思えばあの時の物音の正体もスピカだったもんなぁ……。
そして、ラストシーン。
論理としては理解し切れないところが多く、多様な見解が生まれそうな結末だと思います。
いずれにせよ、結局麦は60年の間孤独であり、スピカと会えたのは最期の瞬間だけだったのだと思います。
しかし、「最期の瞬間にしか会えなかったこと」ではなく、「最期の瞬間についに会えたこと」。今はそれを肯定し、良かったと思いたい結末でした。
二人は紛れもなく再会することができて、「ただいま」と「おかえり」が言えたのだと、自分は受け取りました。
ED後に寄り添う3匹のオコジョ。
非常に短い一幕ですが、自分はこのエピローグが大好きでした。言葉のないこの一瞬が切なくも温かかく、大きな余韻を残してくれました。
CLANNAD・サマポケのネタバレあり(クリックで開閉)
自分が一番好きなkey作品はCLANNADです。その上で書きます。CLANNADより余裕で人生だった。
もちろん作品としてどちらが秀でているかの話をしているわけではありません。しかし、子供の成長と旅立ちを見守る親と、命の終わりまでをも描き切っていたanemoiには、より人の一生が込められていたと思います。そして、普通の人生は光の玉を集めてタイムリープをしません。
サマポケから引き続き主人公の娘が頑張るお話であり、過去作と対比させながら見るのも楽しみのひとつだと思います。
やはり過去作と比べて印象深かったのは、育児→成長→自立までのプロセスを描き切った、『anemoi』ルートの存在でした。まともに子育てできていなかった朋也や羽依里と比べると、麦は男手ひとつでありえないぐらい頑張っていました。かぎなど辺りでネタにされそうな話です。……ネグレクトはネタにするには笑えないか。
スピカの出産後に彼女の死を予期させる不穏なト書きは、過去作プレイヤーに贈るミスリードだったのかなと感じました。
EDで穂乃夏がカレイドワールドの門に触れ、麦・スピカ・穂乃夏が手を繋いでいる一枚絵が出現するのは、サマポケRBのラストシーンを想起させました。
本編は悲劇的な終幕を迎えてしまったけど、素敵な泡宇宙だって存在していたのではないかと。あるいはひょっとしたら自分が知らぬところでこんな奇跡が起こっていたのではないかと。そんな希望を感じさせてくれた一枚絵でした。
まとめ
他所では本作は、サマポケやCLANNADと比較して完成されていたのか、anemoiはkey最高傑作と成り得るのか等、激論が交わされていることだと思います。
自分としては結局ゲームにどのくらい感情移入ができるかというのは、ライフステージとそれに伴う熱量によって大きく変動してくると思います。自分がサマポケをクリアしたのは5年前だし、他のフルプライス作品に至っては10年前です。
特にライフステージに関しては、本作のような人の一生に大いに触れた作品の場合は、顕著に変化が出ると思います。仮に自分がフレッシュな学生時代に本作をプレイしていたら、全く違うものを好きになっていた可能性はあるでしょう。
それらを考慮した上であえてフラットな目線で本作を客観的に批評することは、"自分の能力では"遥かに及ばない領域です。ですから、他作品と比べて優れているか等の話題に自分は触れるつもりはありません。
ということで、ここで述べるのはあくまで個人的な感想です。
anemoi、めちゃくちゃ面白かったです。素敵な作品でした。
個別ルートは全10ルートもある大ボリュームっぷりでありながら、全てが面白かったです。
巷ではkeyの真骨頂とされている「アホな掛け合い」と「泣かせる力」。それらはしっかり押さえられており、感情を幾度も動かされました。
好きな個別ルート:六花>淡雪>愛乃>小詠>スピカ
好きなサブルート:つづら>健>文弥>河瀬>塁
好きなヒロインTOP5:愛乃>玖琉未>文弥>スピカ>河瀬
とさせていただきます。
そして、最後に待ち受けていたグランドルートは、衝撃的な内容でした。
全体的に話の起伏が小さめなスローライフ物語であり、arriveの結末は見方によっては残酷と言えるものだったと思います。
玖琉未が言ったように、悠久の時を生き続けてきたスピカは可哀想ではあったと思います。果たしてその凄惨さはスピカ自身の「自分は幸せだった」という言葉で、片付けていい問題だったのかな、という疑問が全く浮かばなかったわけではありません。
しかし、カレイドワールドにて、玖琉未が麦に伝えた言葉がこちらでした。
「ええ。あなたは、世界を救ったわけではありませんし、歴史に残る偉業を成し遂げたわけでもない」
「アルミアスを使うとしても中途半端」
「ただ、一つの町で、一人の女性を愛し、一人の娘を育て、一日一日を懸命に生きた」
「その『当たり前の奇跡』が……この結末を手繰り寄せたんです」
妹のいない世界に価値を見出すことができず、時間の巡りから逃れるように、旅を続けてきた麦。
そんな彼が自分の居場所を見つけ、一日一日を70年間懸命に生き続けていたこと。そして、彼が最後にスピカと再会できたこと。
目を向けるべきはそこだったのだと感じました。
大仰な奇跡が起き、登場人物全員が報われる。そんなファンタジー世界ならではの絶対的なハッピーエンドが、本作で起こることはありませんでした。
しかし、玖琉未が言うように、麦が当たり前の日々を踏みしめながら生き続けていたことだって、代え難い『奇跡』には違いなかったのでしょう。当たり前のことは当たり前ではないのですから。
世界を救うこともなく、過去に戻って運命を変えることもなく、当たり前の日々を生きただけの主人公。
速川麦の一生を描き切ることに全てを注いでくれた『anemoi』が、自分は大好きでした。
3記事の総文字数はちょうど30000字ぐらいでした。難解でボリュームのある超大作だったので、おそらく記事を書き上げるのは過去一大変でした。
相変わらずまとまりのない文章となってしまったと思います。他の人の感想にはなるべく触れない上で書いたので、どうせエアプみたいなことも書きまくってるでしょう。
しかし、key作品は自分がノベルゲームにハマる契機にもなったゲームです。その最新作をリアルタイムでプレイし、当時の感情をアウトプットできたことは、後には良かったと思えるのかもしれないかもしれません。
全文を読んでくださった方がいらっしゃるかはわかりませんが、三週間お付き合いいただきありがとうございました。
相変わらずサウンドレベルが高すぎた作品なので、曲を聴きながら余韻に浸っていこうと思います。
あー、あー。この腐れきった世界に生まれ落ちたゴッドガール。←一番好きな曲