駆け抜けたい伝説の途中

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【ATRI -My Dear Moments-】感想

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2020年6月19日にANIPLEX.EXEより発売されたノベルゲームです。

ノベルゲームというジャンルの中でも大ヒットを記録した作品であり、現在30万ダウンロードを突破していることが確認されています。今年の4月時点でこの記録らしいので、アニメ効果でこれからますます伸びていきそうですね。

 

自分もそんなアニメ効果の影響を受けた人物であり、今回アニメ放映前にクリアすることを決めました。(単にネタバレを踏むのが怖いからというのが気持ちとして強くはありました。)

 

 

追記よりネタバレを踏まえた感想になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬新だと感じたのは、主人公側からのヒロインへの好感度が初めからかなり高かったことでしたね。

なんせ夏生君は最初からアトリを売らないと決意していました。こういうお話って「最初は相手をロボットとしてしか見ていないクールな主人公が段々……😊」というのが一種の定番だと思っていたので意外でしたね。

実はめちゃくちゃ涙脆かったりして可愛げのある主人公でした。

 

アトリはロボットとは思えない元気溌剌な女の子であり、序盤からひっきりなしに登場人物との漫才を展開していました。

一見怖そうな竜司やハナちゃんもとってもいい人達。日常パートの雰囲気は非常に良かったですね。

 

 

アトリが初恋の相手であることを思い出した夏生。アトリから告白の返事を貰い、最高に順風満帆な主人公。

……からの、ログを見た時の絶望感ったらないですよね。;;

 

夏生はアカデミーではロボット工学を専攻していたそうです。

小西久作のことを図書館で調べるまで思い出せていなかったので、心を持つヒューマノイドが歴史上存在し得ないとされていることまでは覚えていなかったとしても、どれだけ異端な存在であるかぐらいは流石にわかってそうでした。実際に序盤ではコロコロ表情を変えるアトリのことを「AIによる感情」としてしか見ていませんでしたからね。

とはいえそうした考えが揺らいでアトリに心があると確信するようになったのは、それだけ彼女への依存心が強かったのかなと思ってしまいました。

 

考えてみれば面と向かってはっきりと「嫌い」と発言してきた時点で、心がある証左ではありますよね。それ以上に衝撃的すぎて頭が回りませんでしたが……。

 

 

嫌いと発言した理由は言うまでもなく、夏生とアトリの間にあった幸福論の相違によるものでした。

 

アトリ1

 

残された時間があるならば、最後の時まであがき続けるべきである。

たとえ余命いくばくもないとしても、勉強したことも夏生と恋人になったことも決して無駄ではなかったと、アトリは言いました。

 

 

 

夏生はエデンへとアトリを眠らせに向かう際に、親友の竜司からは身を案じられることになります。

結果的に竜司の心配は杞憂で終わるわけですが、過去の夏生ならば彼の言う通りにエデンから戻ってくることはなかったと思います。生き甲斐をアトリにしか見出すことができず、滅びを待ち行くだけだった彼にとっては。

 

父親が飛ばすロケットへの関心も、当初は0%が1%になることは大きな前進であると認めつつも、今更飛んだところで何かが変わるとは思えないという見方をしていました。

それが最終的には過去の清算の象徴として、未来へ向けて生きる覚悟をするための曳光として見ることができるようになったのは、彼自身の内面の変化を感じられました。

 

彼がそこまで成長した理由はアトリとの出会いが大きかったと思いますが、アトリに夏生を託された水菜萌の存在もありました。

実際にアトリと別れた後の夏生は自分を信じられず、アトリの望み通りに未来へ向かうことを諦めかけていました。

そこで水菜萌は夏生が学校での学びを通じて誰かを頼れるようになったことに気付かせ、アトリの願い通りに今後彼を支えていく誓いを立てました。

 

アトリ3

 

その言葉通りに60年後の未来でも夏生の傍に寄り添う彼女の姿は感慨深いものがありました。

一本道のノベルゲームで描かれた、もうひとつの夫婦の形。水菜萌はとても印象に残るキャラクターでした。

 

 

 


 

 

 

人間とロボットの禁断の恋は、持ちつ持たれつの関係でした。

 

夏生からアトリに教えたものといえば心であり、「心を知らないロボットに心を教えていく」という筋書きは、王道の良さがありました。

しかし、アトリが夏生に教えたものもまた、人間味に溢れているものだったと思います。

 

本作のテーマとしては言わずもがな、未来へ生きることこそが幸せという幸福論だったと思います。

しかし、未来に生きていくことに価値を感じられていなかったのはアトリの方ではなく、むしろ人間である夏生の方だったんですよね。

それを逆に人間側が教えられていくというのは意外に思いましたが、それは人間以上に生が刹那的であるアトリだからこその価値観だったと思います。

 

ロボットに『心』を教えた人間と、人間に『生』を教えたロボット。彼らの関係は美しいものでした。

 

 

アトリ2

 

死ぬとわかっていながらも勉強したことは決して無駄ではない。

破滅の時をただ待ち続けるのではなく、最後のその時まで足掻き続けることこそが生きることである。

 

そう自分に教えてくれた少女の存在を胸に刻み続け、60年間を「あがいて」生き続けた男の顛末が描かれたTRUE ENDは感動的でした。

 

 

 

ミドルプライスならではの展開の早さ、日常パートにおけるキャラクターの漫才の面白さ、そしてどんでん返しのような展開まで用意されていること。

中だるみすることなくプレイヤーを楽しませてくれる本作は、まさしく人を選ばない名作であり、このゲームがヒット作である所以を実感できました。

 

どんでん返しというのは中盤でアトリのログが開示される場面のことです。幸せの絶頂からどん底への転落であり、大きなターニングポイントでしたね。読んでいて震えました。

これまでアトリの可愛さが綿密に積み重ねて描かれていた日常が続いていたからこそ、ショッキングな場面として引き立てられていたと思います。

 

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やはりメインヒロインのアトリの圧倒的な可愛さや、透き通るような美しい世界観など、情緒的な部分で没入感を高められていた部分は大きかったと思います。結局理屈ではないのかもしれない。

 

 

現在放映中のアニメも「アトリを可愛く描く」という部分は外さずに丁寧に作り込まれていることが感じられたので、アニメ勢の方々が件のシーンでどういう反応を示すか楽しみですね。

 

アニメ版ATRIの感想

 

……と、上記の感想はアニメ一話放映中に綴ったものだったのですが、好きだったところとして挙げたシーンの大半がアニメではなかったことにされるというまさかの構成で「ぐえ~w」となりましたね。

1クールのアニメ化ならば尺的に余裕があるはずなので原作要素が大胆にカットされることはないと放送前は考えていましたが、そんなことはなかったです。

 

6話目頃までは描写の丁寧さに感服していたのですが、後半はこれでもかと言わんばかりの改変ラッシュでした。上で書いた「件のシーン」はアニメでは存在しませんでした。

特に好きだった「今の夏生さんは嫌いです」という言葉の真意が描かるエデンでのレスバが丸々カットされていたのはショックでしたね。夏生の目が死んでいること、アトリの確固たる幸福論は劇中では一切触れられず、そもそもクセのある設定を持たないキャラクターとしてビルドされていたと感じました。

 

 

最近「ノベルゲームのアニメ化に求められるものは何か?」という議題を目にしました。

そこでは「原作の内容を改変されることをどのくらい割り切れるかによって許せるかどうかは変わってくる」という意見がありました。

一理あるとは思いますが、もっと言うならば各々の"許容量"以上に"好み"が関係してくると自分は考えています。つまりは自身が原作で魅力を感じた部分が改変されているかどうかに依存している部分は大きいと思います。

 

自分は上記の感想で書いた数々のシーンから解像度が高められていた「主人公とヒロインのめんどくささ」にこそATRIの魅力を感じていたので、そういった部分がばっさりカットされていたことはとても残念でした。

無論逆にATRIの他の面に美徳を見出していた方もたくさんいると思うので、そんな方々がアニメ化に満足できたという感想もまた否定できるものではないと考えています。作品の持つ魅力は多面的です。

 

ですからあくまで自分の感性での話ではあるのですが、アニメで施行された改変の9割方は自分にとっては改悪でした。最終回の改変は良かったという声はありましたが、自分はそうは感じられなかったです。

アニメ化にあたって改変は付き物なのはもちろんわかっているのですが、ここまでキャラクターの設定ごと魔改造されまくってしまうのであれば、作品がATRIの名を冠している必要性はないと感じてしまいました。自分が好きになった夏生君とアトリはアニメでは別人でした。

 

 

正直放送終了後はカオス〇ャイルドやリ〇イトよりもエグいアニメ化だったと思ったぐらいでした。とはいえ、思い返してみればキャラクターを可愛く描くという部分がブレずに作画が終始安定していたところは好感が持てました。

ノベルゲームで見せられずに映像作品でしか見せられない最たるものといえば、やはりキャラクターの動きに他なりません。これまで見てきたノベルゲーム原作のアニメは作画すらボロボロだったことも多かったですが、ATRIはこの部分は高いレベルでまとまっていたことは嬉しかったです。

 

あとは良い改変もありましたね。原作だと心を持つATRIに対してロボット工学を専攻していた夏生が疑問を持たないことに違和感がありましたが、アニメではその辺りが突っ込まれていました。

水菜萌の出番が増えていたことも良かったんじゃないでしょうか。ウン。

 

 

 

BGMは日常で流れる『ごきげん戦闘ロボ』『こんにちは太陽』が好きでした。

そして、やはりタイトルBGMの『親愛なるあの日々へ』が良いですね。TRUEを見終わった後にタイトル画面でこの曲を聴き、余韻に浸るまでがATRIだと思います。

 

 

※当記事の画像の著作権は全てANIPLEX.EXE様に帰属します。