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【ハミダシクリエイティブRe:Re:call】感想(ネタバレありりり)

2025年4月25日にまどそふとより発売された18禁恋愛アドベンチャーゲームです。

 

『ハミダシクリエイティブ』シリーズの第三作目にあたるミニファンディスクとなります。他校の女子生徒ということで関わりが薄いながらも強い個性によって存在感を放っていた謎のキャラクター、『聖莉々子』が遂に攻略ヒロインへと昇格しました。

三作目であることとヒロインの名前をかけているタイトル、オシャレすぎる。公式略称は『ハミリリ』らしいです。

 

 

ミニファンディスクは短いものならば数十分程度で終わってしまうこともありますが、本作は予想以上にボリュームが多かったです。

クリア時間目安はおそらくボイスをしっかり聞いた上で6時間前後になるでしょうか。やはりこのシリーズは文章が濃かったです。とても読み応えがありました。

 

自分は元々ハミクリのキャラクターの中で一番好きなのが莉々子でした。ガチです。推しを聞かれたら毎回莉々子と答えていました。

ですから自分にとって今作は世に出た段階で死ぬほど嬉しかったゲームなのですが、プレイしてみたところ自分の期待値を遥かに上回る完成度だったので、嬉しすぎて死にました。

何度か書いていることなのですがハミクリは自分にとってキャラゲーの最高峰のような作品です。本作でも自分が好きだったこのシリーズのスタイルが余すことなく取り入れられており、感動しっぱなしでした。

 

 

追記よりネタバレを踏まえた感想になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレイ前の期待や予想の答え合わせ

無印の華乃ルートでののかさんに対して反応を示していたこと、ツブヤッキーでレスバをしていたという詩桜アフターでの情報などから、実は智宏や華乃と同族のオタクなんて予想もされていた莉々子さん。実際にはそれは誤りでしたね。

元々彼女は純文学やガーデニングなどの趣味を多く持っており、祖母の家で暮らしていた振りにたまたまののかさんの漫画を目にしたことで、自分の漫画を描き始めたというのが真相でした。

隠れオタクと思われていたその実態は、少女漫画大好き・ロマンチック事大好きな乙女でした。可愛い。それを反映してるのか所謂恐ろしい子パロの立ち絵が用意されてるのは笑いました。

 

ハミクリのヒロイン5人はいずれもクリエイティブなスキルを持っており、超高校級の実績を数字で出しているような有名人達です。莉々子の創作スキルは身も蓋もないことも言ってしまえば華乃の下位互換なのにも関わらず、それがルートの本筋として描かれていることも意外でした。

あとは他の方の感想を見て気づいたのですが、智宏を二人称で名前呼びしてくるヒロインは莉々子が初めてでしたね。他のヒロインと異なる要素をいくつも感じさせてくれるキャラクターであり、枠組みからハミダシていた存在だったことが伺えました。

 

 

智宏は莉々子さんと付き合っていく過程で、彼女の漫画に愛溢れる4万字感想×3を送っていました。

自分も日記感覚で毎週感想を書く活動はしているので親近感を覚えるのですが、それにしても13ページの漫画に対して4万字の感想を述べられるというのは文章力と言語化能力の塊すぎて腰を抜かしました。それも批判をせずに事実だけを書くという縛り付きで。なんというスペックの高さ……。

 

 

 

詩桜先輩は無印ヒロインの中では最も台詞量が多かったのではないでしょうか。相当目立っていましたね。

色々な意味で元凶すぎる人物であり、無印はルートによっては非協力的なことも多かったように思いますが、このルートに関してはかなり面倒見のいい先輩モードでした。ハミクリ最強キャラであるこの人が味方なの、心強すぎ?

 

生徒会と莉々子が繋がる為の架け橋も、詩桜先輩が用意してくれました。

内容としては莉々子に負い目を感じさせてしまうような告げ口だったと思いますが、結果的には智宏と莉々子に謝る場を作ることに成功していました。好意的な伝え方しかしてないって言われてたけど、一体どんな説明をしたんだ……?

 

智宏からは「今までの先輩だったら常盤と莉々子さんをぶつけて面白がりそう」なんて言われていましたが、本当にその通りだったと思います。

前作の詩桜ルートでも同じでしたが、やはり詩桜の智宏に対する印象の転換点はみかんカフェの一件だったことが伺えました。あまりにも義理堅い。

 

 

自分はプレイ前は莉々子がどういう人物なのか智宏に明かす相談役のようなポジションは、新キャラのメイドさんである礼良が担当することになると予想していたのですが、全然そんなことはなくて普通に詩桜先輩でした。

ハミクリは立ち絵のないモブですら人間味のある人物として描かれることが比較的多かったので、本作もそういったスタイルが継続されていくのかと予想されていました。

他校の女子生徒Aと他校の女子生徒Bも、莉々子の理解者としてかっこいいシーンでも用意されんのかな?と。結局登場したのは終盤も終盤であり、彼女の取り巻き以上の意味はなかったようです。

 

ラララさんは新キャラクターとして紹介されていたにしては出番は少な目だったかもしれませんね。

妃愛のマネージャーのように補佐役なりの感情が意味を持って語られたりするのかと思っていました。こういうキャラが主従関係でありながら親友でもある的な設定はありがちですが、普通に就活失敗した大学生でした。

とはいえ、思えば凸の妃愛アフターに出てた柑凪と伊々奈も出番はそこまで多かったわけでもないですから別にこんなものではありそうです。

 

 

 

「莉々子と付き合うには智宏側から歩み寄る必要がある」という詩桜の助言通りに智宏は背伸びをし、彼女が大好きな王子様を演じました。

 

お馴染みの莉々子節で告白に応える彼女の姿は、ファン達が長年夢見てきた場面が実現した瞬間だったと思います。このゲームで一番感動したシーンでした。

ここぞとばかりに流れたBGM『一輪の百合』のピアノアレンジも良かったです。

 

他に本作がファンの長年の期待に見事に応えてくれたことと言えば、「エッチの時に訛りが出そう」という全ユーザーがしていた予想だったと思います。やっぱりすぎる。個人的な予想よりはあまり出ていませんでしたが。

 

 

 

『ハミリリ』はちゃんと『ハミクリ』だった

終盤では莉々子が千玉学園生徒会に加入してくれました。

他校の生徒が生徒会室で仕事をし出すというのは展開としてはやや強引という声ももしかしたらあるのかもしれませんが、個人的には本当に嬉しかったですね。

 

他校の生徒でしかなかった彼女がこうしてヒロインの輪の中に入れたという意味でも良かったのですが、自分が何よりもハミクリシリーズで好きな部分である「他ヒロインとの相違点や関係性を踏まえたキャラクター像の掘り下げ」が見られるようになったというのが嬉しすぎました。

 

 

ヒロイン同士の掛け合いというのはどのゲームでもあると思うのですが、ハミクリはヒロイン同士の会話だけには留まらず、それを見た智宏による圧倒的文章量のト書きによってキャラクターの解像度を大いに引き上げてくれていると感じます。

 

例えば、「〇〇だったらこうする」「〇〇とは異なる」などのヒロイン同士の性格の比較。

 

例えば、人間関係がめんどくさいキャラクター達によって包み隠さず語られるヒロイン同士の性格の相性。

 

描写として多いと感じるのは上記二つですが、他には本作での詩桜先輩の台詞である「常盤さんか錦さんのどちらかと付き合うと予想してた」というのも面白かったですね。かなりアドベンチャーゲーム目線であり、プレイヤー目線のような話でにやにやしてしまいました。

莉々子ルートが運命的ではなくイレギュラーとされていたのは、作中での分岐方法からしても自明だと思います。同人イベントと九州でレアエンカウント二回通してようやくですからね。

 

上記のような普通ならばファンが想像で補うであろう部分をハミクリは公式自らがバリバリ言語化してくれるので、物語に深層的な奥行きが持たせられています。

智宏視点でも言語化が叶わない妃愛の気持ちなど、他にも面白いところはもちろんいっぱいあるのですが、ハミクリが自分にとって理想のキャラゲー作品だと思える最大の理由がこちらでした。(あまり言うとキャラゲーの定義的な話にもなってしまいますが。)

 

 

後述の莉々子の成長という部分にも通ずるのですが、千玉学園生徒会に参加した彼女の他メンバーとの関係性の描写も最高でしたね。

 

元々千玉学園の生徒会は智宏がいる前提で成り立っているコミュニティです。同学年のヒロイン同士は結果的には友好的な関係になっていましたが、華乃と詩桜などのどうしても相性の悪い人物同士は存在していました。

このような綺麗ごとではないめんどくささが登場人物間で理由を以って描かれていたので、このシリーズの人間関係にはリアリティが感じられました。

 

智宏自身が莉々子の発言を根に持っていると断じ、生徒会加入前の彼女と話し合いの機会を設ける場面は良かったですね。しっかり生徒会長としてけじめをつけようとしてるし、しっかり莉々子の彼氏として押し付けにならない言葉選びを考えていました。

莉々子もやはりシンポジウムでの一件があった通り本来は敵側の人間なのですが、それが味方側になる経緯が彼氏や友人からの紹介というゴリ押しの形ではなく、全会一致の結論として筋を通していたのは流石はハミクリだと思った展開でした。

彼女自身が許せない存在だった不登校に対する向き合い方を省みるという内面的な部分においても、一度『堕ちた人』と評してしまった人物に対しての誠意という外面的な部分においても、非常に丁寧に描かれていたと感じました。でもアメリ不登校だと勘違いしてたのはちょっと笑ってしまった。

 

 

 

智宏は実際のところ心の中では漫画をうんこ呼ばわりしていたわけでしたが、莉々子に対するベタ褒めスタンスが変わることは最後までありませんでしたね。

そこには文化祭の約束の反故の為に聖会長に取り入りたいという打算半ばの気持ちがあり、彼自身も関係を深めるに連れて罪悪感を覚えていました。

智宏の胸中は複雑でありながらも、莉々子に対して不誠実にならないように整えられていたと感じました。

 

違うか? 俺は聖会長の機嫌を損ねないよう、不満だらけの感想をきれいな言葉に置きかえたじゃないか。

挙げ句には、文化祭での対応を和らげるために聖会長の喜びを利用しようとした。彼女はそんな俺を部屋へ招き、歓迎までしてくれているというのに。

相手が傷つくとわかっていて不満だらけの感想をぶつけるよりは、よかった探しをしたほうがよほどいい。それ自体は今この瞬間でも間違っていないと思える。

だけど、もう少しだけでも、言葉を取り繕うことに申し訳なさを感じてもよかったんじゃなかろうか。現に、俺は今とても胸が痛い。

今から真実を告げたところで、聖会長にとっても俺にとっても不幸でしかない。それが最良の行動とは思えない。

ならば俺がとるべき行動は、周回遅れであっても真心あるのみ。

 

今から真実を告げることは最良の行動にはなりえない。自分の意見を否定されることを本能的に嫌う莉々子への付き合い始めとしては、やはりこれで良かったのだろうと思います。

確かに不満だらけの感想をきれいな言葉には置き換えていましたが、そこに嘘は混じっておらず、一見駄目とされる作品にも賞賛されるべき部分はありました。

智宏の4万字という正直ありえない数字による感想も、言葉を取り繕ってしまっていることに対する誠意であり、彼の言っている『真心』の現れだったのかなと感じました。

最初は打算だったし、最後まで取り繕ってはいたけど、それでも間違いではない関係だったと思いました。

 

 

彼女は意見を全肯定され続けていたわけではなく、前述の生徒会加入前の智宏との面談や、漫画がエロ漫画になりかけていた時にストップをかけられたことや、詩桜に生徒会での行動を諭されるなどのイベントも踏まえ、自分の意見を無理に押し付けるスタイルはややマイルドになっていったことが語られていました。

最後まで莉々子は同調を求め否定を嫌う性格であり、智宏も彼女の漫画を本音で斬ることはしませんでしたが、智宏や生徒会役員との関わりを通じて彼女は「折り合いを付けること」を少しずつ学んでいました。

 

本質は変わらないままだけど人間的な成長はしたという、絶妙なキャラビルドがされていたシナリオだったと思います。自分の大好きな方向性でした。

やはり無印をプレイした人からの莉々子に対する大きな印象といえば、件の口癖が代名詞と化していることに基づく「同調圧力がスゴい人」ですからね。本作ではそれが彼女の本質として最後まで大事にされていたというのは、古来からの莉々子推しとしては嬉しかったです。肯定されたら超喜んで否定されたら超怒るの、あまりにも赤ちゃん過ぎて可愛い。

 

 

 

本作は登場人物達の文化祭への熱意が本編の個別ルートほどはなく、友情努力勝利の舞台が大きな山場として演出されることはありませんでした。

本編で好きなパートだったので見たかった気持ちもありましたが、他校の女子生徒で関わりが希薄な莉々子とは交際までの過程が最も重視されて尺が割かれるのは構成上頷けるし、そもそも「ラスボス和解ルート」という反則的な世界線を手繰り寄せたのだからそうなるというのも必然です。本人が言うようにチートでした。

 

これまでロマンチックな恋愛だけを美徳としていた漫画家がエロ漫画を描き始めたと思ったら、今度は生徒会の友人達を意識した何の脈絡もないシーンを入れたこと。

それは生徒会メンバーへの感謝を表したものでもなければ、彼女達へのメッセージでもなかったと思います。自分が描きたいものを愚直に描き続けていた莉々子だったからこそ、自分が本心で描きたかっただけのものを描いたという純粋さが感じられて、あすみのように感動してしまった場面でした。

 

既述の通りぎこちないクリエイティブスキルをベタ褒めしていくという異例のルートであり、最後まで生徒会の仲間達からも善意による肯定をされ続けていたのが良かったですね。

智宏には終始心の中で突っ込まれており、最終的にもいいね数は15止まりであり、彼女の漫画は一般的にはうんこではあったと思います。

それでも智宏と莉々子にとっては共通の話題であり、二人を繋ぐ架け橋となった趣味であることには違いありませんでした。

 

 

エンディング前に当該コマを再現したCGで締めたのも良かったです。

莉々子の作品を愛した生徒会役員達によって、ギャグみたいなシーンを意味のあるものとして昇華させる。智宏が言うようにいくら友人の作品でも自分達が読者の代表と考えることは烏滸がましいと思いますが、自分達を繋いでくれて自分達を意識してくれた作品に対して、今この瞬間は彼女の作品を共作したと心の中で思い込むことも悪くはなかったのかもしれません。

 

青春漫画と比喩されたそのワンカットは、ヒロインの枠組みからハミ出していた莉々子が晴れて「一員」となれたこと、主要登場人物全員の集合絵というシリーズの集大成を感じさせられる切なさなど、様々な感情を呼び起こさせられる一枚絵でした。

エンディングに入る直前の最後の莉々子の台詞は、上述した通りの彼女の本質的なブレなさと人間的な成長を象徴している台詞であり、とても感慨深かったです。

 

 

 

まとめ

過去作での聖会長は「生徒会の団結」「文化祭の成功」という出来事に繋がる動機を与えた舞台装置でありながら、ののかさんに対する反応やぶた汁発言など、ギャップに富んだ顔もひそかに覗かせていたサブキャラクターでした。

本作ではそれらが満を持して回収されることで伏線として昇華され、彼女は晴れてハミクリヒロインの仲間入りを果たしました。

 

 

上記ではキャラクターの掘り下げというシナリオ的側面の話ばかりをしてしまいましたが、それらはあくまで自分が最も気に入っている部分を挙げたに過ぎず、あくまでこのシリーズの魅力の一端でしかありません。

思わず笑ってしまうようなキャラクターの掛け合いや、ヒロインの可愛さの引き立て方が上手いなど、萌えゲーとしても完成されているのがこのシリーズでした。

 

好き

 

お前の方が可愛いけどね

 

 

莉々子はステレオタイプの悪役令嬢というやや個性的な性格で、そもそもの出番が少なく、発売後人気投票の順位も広夢以下ということで、キャラクター性としては人を選びやすい印象がありました。

ですからエイプリルフール動画を見た時も彼女がヒロインに昇格するなんて流石に難しいだろうな……なんて思ってたので、本当にファンディスクが発売されると聞いた時はそれはもう感動しまくった覚えがあります。

莉々子が主役で、莉々子を攻略することしかできない、莉々子のためだけに発売されるファンディスク。公式の扱いの大きさに感激しました。

 

自分は正直期待値を上げすぎても怖かったので、ホテル行ってセックスして終わりみたいな内容でも構わんぐらいの心構えで発売を待っていたのですが、それが失礼すぎたと言えるほどにミニファンディスクとしてはクオリティの高いゲームだったと思います。

しっかり自分の大好きだったハミクリのまま、しっかり自分の大好きだったキャラクターがヒロインをやっていた内容に、感銘を受けました。

 

 

既述の通りハミクリはキャラゲーとして自分が求めているものに最も近い作品でありつつも、所謂推しと呼べる存在がメインキャラクターの中にいませんでした。

しかし、この度最も好きなキャラクターがヒロインへと昇格したことで、自分にとって完全無欠のタイトルとなってしまいました。

10点満点で評価すると7兆点でした。そう思いますよね?

 

 

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